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音替えプランの立て方〜バルトーク《管弦楽のための協奏曲》第4楽章を題材に〜

こんにちは。
打楽器奏者・アレクサンダー・テクニーク教師の泉純太郎です。

初心者や中級者の方にとって、ティンパニを演奏する際に「どの音をどのティンパニに割り振るか」を考えるのは、難しく感じられることが多いのではないでしょうか。

丁寧にペダリング・プランを立てたつもりでも、実際に楽器で演奏してみるとうまくいかない——そうした経験をお持ちの方も少なくないと思います。

特に、音が頻繁に変わる作品では、音替えプラン(ペダリング)の良し悪しが、演奏のしやすさだけでなく、音楽表現そのものを左右します。

この記事では、バルトーク《管弦楽のための協奏曲》第4楽章の一部を題材に、実際にどのようなプロセスで音替えプランを組み立てていくのかを、具体例を交えながら紹介していきます。


1. 今回の題材

今回取り上げるのは、バルトーク《管弦楽のための協奏曲》第4楽章 42〜50小節です。

楽譜を読む際の基本として、テンポや拍子の確認は不可欠ですが、ティンパニの場合は使用されている音程の把握が特に重要になります。

この箇所には、

  • 変拍子が続く
  • 音替えの回数が多い

といった特徴があり、音の割り振り方次第で、

  • 響きが濁る
  • 意図しないグリッサンドが生じる

といった問題が起こりやすくなります。

そのため、下の楽譜のように事前に音替えプラン(ペダリング)を整理しておくことが重要です。


2. 各サイズのティンパニの音域を確認する

音替えプランを考える前に各ティンパニの「音域」と実際によく使われる「実用音域」を確認しておきましょう。

それぞれの楽器が理論上出せる「音域」と、演奏上無理なく使える「実用音域」は、必ずしも一致しません。

音域内であっても、

  • 音程が不明瞭になる
  • 音色が極端に悪化する

といった理由から、実用的でない音も存在します。

一般的な傾向としては、

  • 小さいティンパニは、音域の中でも高めの音がいい音で鳴りやすい
  • 大きいティンパニは、音域の中でも低めの音がいい音で鳴りやすい

といった特徴があります。
(※ メーカーやモデルによる差があるため、あくまで目安です)

この前提を踏まえて音替えプランを考えていきます。


3. 音替えプランの基本方針

今回の音替えプランは次の考え方を基準に組み立てます。

  1. 両端のティンパニ(23″・32″)でしか出せない音があるかを確認する
     → 該当する音があれば、この段階で割り当てが確定します。
  2. 23″と32″はできるだけ固定し、中央の2台(26″・29″)で音替えをする

両端に配置されたティンパニのペダルを頻繁に操作すると身体の向きが大きく変わり、演奏の安定性が損なわれやすくなります。

そのため今回は、

  • 両端はできるだけ固定
  • 中央の2台で音替えを処理する

という方針を採用します。

※《薔薇の騎士》など、この方法が通用しない作品も多くあります。
 今回はあくまで一例としての考え方です。


4. 23″と32″の音を決める

最初に、両端のティンパニから決めていきます。

今回の42〜50小節では、

  • 特定の音を23″でしか出せない
  • 特定の音を32″でしか出せない

といった音域上の制約はありません。

そのため、23″と32″のペダルを途中で操作する必要はなく、特に理由がなければ

  • 最高音 → 23″
  • 最低音 → 32″

という、オーソドックスで無理のない割り当てを前提にプランを組み立てることができます。

そこで、ここではまず、

  • 23″:高い E
  • 32″:低い F

という割り当てを仮定してみます。

しかし譜面全体を見ると、高いEは1回しか登場しないことが分かります。

この1音のために23″をEに固定すると、26″の音替えが多くなり、大変です。

改めて楽譜を確認すると、
Eb(D♯)が頻繁に登場していることが分かります。

そこで今回は、23″をEbに固定するという選択をします。

このように、

  • 音の登場頻度
  • 前後の音との関係

を基準に、固定音を決めていくことが重要です。

23″をEbに設定した場合。26”の音程の変更は3回
↑23”をEに設定した場合、26″の音程を変更するのは6回となる。23″をEbにした場合の2倍である。

5. 26″・29″ のプランを立てる

次に、実際に音替えを担当する26″ と 29″のペダリングを考えます。

判断基準は次の3点です。

  1. その音がその楽器で無理なく鳴らせるか
  2. 次の音に自然につなげられるか
  3. できるだけ良い音で鳴らせるか

冒頭の低いGは26″では出せないため、この時点で29″に確定します。

次のCは29″で演奏すると確実にグリッサンドが入るため、26″が適切です。

44小節のBbは、26″・29″ のどちらでも出せますが、多くの場合29″の方が良い音で鳴らせるため、Bbは29″に割り当てます。

このように、

できるだけ無理なく音を替え、良い音で鳴らす

を基準に、音の割り振りを決めていきます。

なお、23″をEbに固定している関係で、47小節のEナチュラルは26″で取る必要があります。

Ebと比べてヘッドのテンションが高くなるため、音色がきつくなりやすい点には注意が必要です。


6. まとめ

音替えプランを立てる際に重要なのは、単に「音が出るかどうか」だけではありません。

  • 音質
  • ペダル操作のしやすさ
  • 音楽の流れの中での自然さ

これらを総合的に考えることが重要です。

バルトークの作品では、どの音をどのティンパニに割り当てるかという判断そのものが、演奏の安定性だけでなく、音楽表現にも直結します。

まずは短いフレーズから、複数のプランを作って実際に演奏し、比較してみてください。
その積み重ねが、長い作品でも無理のない音替えプランにつながっていくはずです!

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